Diary

カレーときどき村田倫子 #19 紅茶屋さん






ドアをくぐり、居間に入るとふわっと香るスパイスの香り。 それに混じり合う、あのなんとも言えない、実家に帰ってきたときの温かいじわっとした匂いが鼻腔をくすぐる。 思わず、「ただいま」と言ってしまいそうだ。 今回の『カレーときどき村田倫子』は、今年最後のカレー納めにして、連載史上初となる東京都外へ進出! 知る人ぞ知る、名店埼玉県は大宮の「紅茶屋さん」にやって来ました。



民家の間取りを活かした店内は、本当にはじめてと思えないほど心が穏やかに…。書道の掛け軸やスリランカの国旗、スパイスのポスターと和と異国の文化が絶妙に寄り添う空間が不思議と心地よい。 初っ端からエモい気持ちに浸りながら、席につくわたしです(笑)。



席につくと、店主の加地信江さん、いいやもうここは、“お母さん”と呼ばせていただこう! 次から次へと今日の主役たちを運んできてくれるお母さん。メインのチキンのカレーをセンターに、色とりどりの季節のお野菜、お惣菜…あっという間にテーブルが溢れんばかりにカラフルで愉快になりました。



ぜひ、真上から見てください! まるで、めでたいお祝いごとや特別なイベント事がある日の食卓(いや実家でもこんな光景なかなか見れないぞ?)という豪華な絵。 今の流行りでいうと、それはもうフォトジェニックな光景で、わたしのiPhoneのカメラのシャッター音がしばらく鳴り止みませんでした、、、。カレーを写真に収めてるときが1番テンションあがるんだよなあ。



写真撮影もそこそこに。 くつくつ音をたてるチキンカレーのご機嫌を損ねないうちに、テーブルに向き合います。まずは、目の前に置かれたお皿のおめかしから。この空間に自分でカレー達を盛りつけてゆくのです。



カレーのコーディネートに悩んでいると、お母さんが今日のメニューの紹介を交えつつ盛り方を教えてくれます。 チキン、お豆、青菜、お茄子、ココナッツ、ジャガイモ、蓮根、かぼちゃにカブ、ライスに君臨するピンクに上気したエビさん…! なんて豪華で華やかな一皿なのでしょう。 カレーは茶色!という概念を全く覆す美しさです。



準備も万全、早速いただきます~! 右手にスプーン、左手にフォークを構えて、お皿に残していた空白に好きな具材を取り分け、フォークをナイフのように使って混ぜ合わせて自分だけのオリジナルの一口をつくる。 この、食べ方はマイカレー史上初体験! まるで高貴なコース料理を嗜んでいるかのような気分になり、この時間さえ上品で愛しい。



口に広がる味は、毎回違った味の溶け合いを楽しめて、スプーンを運ぶたびに新たな素材のハーモニーの発見に胸が高鳴ります。チキンはホロっと口で崩れ落ち、そこに野菜たちの甘さがふんわり包んでくる。 ポルサンボールというココナッツから作られるスリランカの振りかけを少し混ぜ合わせると、また辛味と風味が増します。 本当に奥が深いスパイスの風味。



カレーという一皿の料理だけども、このプレートには無限大の組み合わせと楽しみ方がある。一口、一口が自分オリジナル。 なんて素敵なカレーなんだろう。(食べながら、感極まってまたエモくなってきたぞ…!) 美味しさに顔をくしゃくしゃにしていると、笑顔でお母さんがやってきました。スリランカカレーにハマっているという私の話を聞きながら、ご自身のスリランカの知識を色々と教えてくれます。



そもそも皆さん、気になっていたであろう…なぜカレーが出てくるのに、「紅茶屋さん」というネーミングなのかと! 毎日新茶ができる、1年中が紅茶の旬のスリランカ。お母さんがスリランカと出会ったのは、大好きな紅茶がきっかでした。 専門的なお勉強を始めたのは、まだ日本で紅茶専門店が少なかった頃。広く深い紅茶の世界に惹かれたお母さんは、自分が長く飲み続けた美味しい紅茶を少しでも多くの人に味わってほしいという思いで、紅茶専門店紅茶屋さんを開業。スリランカの歴史や文化と切っても切れないスパイスを使ったスリランカカレーも予約制で振舞うことにしたというわけなのです。 県外や地方からもカレー好き、スリランカ好きの人たちがその噂を聞きつけてやってくるそう。



お皿の空になったところで、デザートの時間。 紅茶屋さん自慢の紅茶リストから好きなものを選びます。 どれも初めてお目にかかるネーミング。私は天然のミントフレーバーが特徴的な「ウバ」をチョイスしました。 紅茶のお供には、一見餃子!?に見えるスリランカのお菓子。丁寧にココナッツミルクで煮込んだオリジナルの白餡と、からっと揚げた衣の掛け合いに、紅茶のフレーバーがまたよくマッチします。これはやみつきになるコンボです。



オープニングからフィナーレまでスリランカの食文化を大満喫。 お母さんのチャーミングなトークも合わさって、より美味しい時間になりました。え、ねえ、、、ちょっと、、、!こんなに美味しいカレー三昧と、お母さんとの楽しいトークの時間に浸りに浸って、お一人1300円てどうゆうことですか?!?!目からウロコですね。お母さんの愛情と懐の深さ、人柄すら溢れ出ます。



そして、なんとなんとサインを頼まれてしまったよ私…! えー、そんなええのですかねえ、、、(戸惑い) でも嬉しいから、ありがたく村田の痕跡を残させていただきました! カレー愛を渾身に込めたサインを書いてきたぜ! この気持ちは誰にも負けないぞ!笑



心もお腹もホクホクと温まりました。今度は「お邪魔します」ではなく、「ただいま」と言って遊びに行くね。ありがとうお母さん。 そして皆様、今年1年も『カレーときどき村田倫子』にお付き合いいただきありがとうございました。 来る年も、ますますカレーを極める年に致します。それでは、よいお年を。

 

Navigator&text:Rinko Murata
Photo:Kayo Sekiguchi
Edit:Miiki Sugita/Namiko Azuma

 

INFORMATION

 

紅茶屋さん

住所 : 埼玉県さいたま市大宮区三橋4-233-2
営業時間 :10:00~18:00(冬期 ~17:00)
定休日 : 不定休
URL : http://www.kouchayasan.com/
TEL : 048-622-5931
※スリランカカレーは予約制