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【3月公開の注目映画】編集部のおすすめ5選

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1.『お嬢さん』

『渇き』『親切なクムジャさん』などを代表作に持つパク・チャヌク監督。
前作『オールドボーイ』では、タランティーノが「グレイト!最高に素晴らしい」と絶賛を寄せた。そんな前作以上のR-18衝撃作が世に放たれた。官能と欲望と、それらが渦巻く騙し合いを描いた『お嬢さん』だ。

世界観が徹底された美術、画角に溢れんばかりの圧倒的な映像美。
まず、それだけで映画館に来てよかったと思わせるほどの説得力!
どこを切り取っても美しく質の高い画に圧巻。そして女優陣の淫らで愛らしい身体性や、頑なで鬼気迫る表情を見事なまでに描ききっていて、“目合い(まぐわい)”のシーンはため息が出るほどの美しさ。文字どおり、匂い立つような目線が印象的だった。

しかも、美しいだけでなく、面白い。
3部に渡って織りなされる物語の展開はもちろん、登場人物の可笑しみも隈なく拾い、散りばめられている。ビジュアルからは想像がつかないかもしれないが、声に出して笑ってしまう部分もあり、その緩急のバランスの良さが凄まじい。
中盤からは、張り巡らされた伏線の回収オンパレードで観ていて本当に気持ちがよく、2時間超えの上映時間を感じさせなかった。

そして、私はこの映画にフェミニズムも垣間見た。
「私の日々を壊しにきた救世主」というニュアンスのセリフの輝きが今も忘れられない。撞着的な言い回しだが、儚く強い、激しく脆い“女性”を描いたこの映画で、その一言は一際光って見えた。抑え付けられ、虐げられる環境下でも自分の幸せを追い求め、戦う女性。
そんな女性に対する拍手と賛辞が、この映画から聞こえてきた気がする。

▼あらすじ
1930年代、日本統治下の朝鮮半島。スラム街で詐欺グループに育てられた少女スッキは、藤原伯爵と呼ばれる詐欺師から、莫大な財産の相続権を持つ令嬢・秀子を誘惑して結婚した後、精神病院に入れて財産を奪い取ろうという計画を持ちかけられる。計画に加担することにしたスッキは、人里離れた土地に建つ屋敷で、日本文化に傾倒した支配的な叔父の上月と暮らす秀子のもとで、珠子という名のメイドとして働きはじめる。しかし、献身的なスッキに秀子が少しずつ心を開くようになり、スッキもまた、だます相手のはずの秀子に心惹かれていき……。

▼Information
『お嬢さん』

絶賛公開中!
原作:サラ・ウォーターズ「荊の城」
監督:パク・チャヌク
出演:キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン、キム・へスク
配給:ファントム・フィルム
公式HP: http://ojosan.jp

 

©2017映画「3月のライオン」製作委員会


2.『3月のライオン』

手塚治虫文化賞マンガ大賞をはじめ、数ある賞に輝いた国民的人気コミック『3月のライオン』。連載10周年の記念すべき実写映画化にふさわしい、スタッフ・キャストが集結した。監督は『るろうに剣心』シリーズを手掛けた大友啓史、主演は本作の主人公と同じく、子どもの頃からプロとして活躍し続けてきた神木隆之介を抜擢。『桐島、部活やめるってよ』『君の名は。』などでその才を余すことなく発揮した、日本映画に欠かせない俳優だ。

中学生でプロ棋士としてデビューした桐山零は、東京の下町に一人暮らし。
将棋界の若き天才ともてはやされながら、家も家族も居場所も何もない。
深い孤独を抱えていた彼の生き方を、とある3姉妹を始めとする人々との出会いが変えていく。

“豊かな物語”“自己投影できる主人公”。
大友監督のインタビューを読んだ時、この二つの言葉が印象に残った。
勝負だけじゃない、また別の大事な要素も内包した人間味溢れたストーリー。そして、“どこへ向かって、どんなふうに生きていけばいいのだろうかと悩む姿”は、今の自分、あるいは、かつての自分に重なっていく。

原作の世界観や言葉の力、それらの豊かさを抽出しながら、個性豊かな演者陣の声色や表情で一瞬一瞬の時が余すことなく表現されている。その素晴らしさは、予告の段階ですでに息をのむほどだ。
連載中ということもあり、映画としての着地点も見どころの一つ。
映画だからこそできることを極めた青春映画だ。
そして、名残る冬に後ろ髪をひかれながらも、始まりの風を背に受けて前に進むしかない、この春という強く優しい季節に観るのにふさわしい映画。

▼あらすじ
中学生でプロ棋士としてデビューした桐山零は、幼い頃に交通事故で家族を失い、父の友人である棋士の幸田に引き取られた。しかし、ある事情から家を出て、東京の下町に一人で暮らしている。深い孤独を抱えてすがりつくように将棋を指し続けていたある日、零は近隣の町に住む川本家の3姉妹と出会い、彼女たちとのにぎやかな食卓に居場所を見出していく。温かな支えを胸に、闘いへと飛び込む零。それは、様々な人生を背負った棋士たちが、頭脳と肉体と精神のすべてを賭ける壮絶な闘いだった……。ところが、ある事件が川本家を襲い、さらに3姉妹を捨てた父親が現れ、耳を疑う要求を突き付ける。一方、幸田家も親子の対立から崩壊へと向かっていく。大切な人たちを守るため、強くなるしかない。新たな決意のもと最高峰を決める獅子王戦トーナメントに挑む零。トップには、将棋の神の子と恐れられる宗谷名人が待ち受けていた─。

▼Information
『3月のライオン』

【前編】3月18日(土) 【後編】4月22日(土)2部作連続・全国ロードショー
原作:羽海野チカ「3月のライオン」(白泉社刊・ヤングアニマル連載)
監督:大友啓史
出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶ほか
配給:東宝=アスミック・エース
公式HP: http://3lion-movie.com
予告URL: https://youtu.be/dxhQ_pGQcys

 

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3.『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』

“理由”について考えていた。想い合いながらすれ違う理由、すれ違いながら共にいる理由、好きだけど離れたい理由、昨日嫌いで、今日大好きなその理由…。愛を巡るそれぞれの理由は、いつも不確かで、言葉にはできない。それでいて私たちは感覚に近いそれらに従って、求め合っては突き放してを繰り返す。

スキー事故で負傷した女性弁護士トニーは、リハビリに励みながら、心から愛したジョルジオとの過去について振り返る。パリで運命的な再会を果たした男との恋愛と結婚、別れようとしても離れることができない情熱的な深い愛の絆。 なぜ男と女はすれ違うのか、そんなユニバーサルな愛の問題を官能的に描いた 大人の恋愛映画だ。

愛によって満ちていく表情の輝き、愛によって疲弊する表情の歪み。
エマニュエル・ベルコの直情的で体当たりな演技は、生々しく素敵だった。
そして観ている側を度々苛立たせながら、そのチャーミングさでしっかり心を掴んでしまうヴァンサン・カッセルの魅惑のダメ男。多くの女性を翻弄したのも納得のムードなのだ。

「昨日脅したと思ったら、今日求婚する。私はもっと平らがいい」
安定と安らぎを求め、別れを切り出す女に男は言う。
「心電図だって上下してる。平らは死亡だよ」
男女の愛の方向性の違いを言い得たそのセリフの素晴らしさ。
違っていることに惹かれて抱き合ったのに、いつからかその違いが許せなくなる。深くうなずきながら、画面に食いついてしまった。

エモーショナルな愛にきっと理由などない。あったとしても、説明はできない。でも、この映画は、言葉の意味を超えた“理由”を静かに問うてくる。
2人の物語を飛び越えて、今これを観ている自分の愛について、だ。

▼あらすじ
弁護士のトニーはスキー事故で大けがを負いリハビリセンターに入院する。リハビリを続ける中、ジョルジオとの波乱に満ちた関係を振り返る。これほどまでに深く愛した男はいったい何者だったのか。なぜ、ふたりは愛し合うことになったのか。10年前、トニーはかつて憧れていたレストラン経営者のジョルジオとクラブで再会し、激しい恋に落ちる。瞬く間に意気投合したふたりは、電撃的に結婚を決め、トニーは妊娠するが…。

▼Information
『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』
3月25日(土)、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

監督:マイウェン
出演:エマニュエル・ベルコ、ヴァンサン・カッセル、ルイ・ガレル、イジルド・ル・ベスコ
配給:アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル

 

(C)Bon Ishikawa


4.『世界でいちばん美しい村』
2015年4月25日、9000人以上の人々が亡くなったネパール大地震。
写真家・石川梵は、直後にカトマンズへ飛び、ジャーナリストとして初めて震源地の村ラプラックへ向かった。ヒマラヤ山岳地帯にあるその村には、カトマンズからの報道からは見えてこないネパール大地震の現実があった。
これは、石川が撮り続けた悲惨な現状と美しい真実の物語だ。

"美しい"のは、眩しい瞳、燃えるような歌声、今を編む指先、そう、人そのものなのだ。果てのない空、聳え立つ山々、その隙間から昇り暮れる陽、それを見つめる人がいるということ。いのちがあるって何よりも美しいことかもしれない。
この映画はそんなことを強く感じさた。

石川が行動を共にしたラプラックの少年アシュバドル。
2人の間に芽生えた、唯一無二の友情。
この映画は、ひとりの若き友人との約束でもあった。

歌い手コピラは、その雄大な自然に向かって歌う。
「棚田の稲穂はたわわに実り、収穫のときを迎えようとしている
しかし私の心はここにない 肉体から離れ彷徨っている綿の布団を作り、冬の備えはできたしかしラプラックのかなしみは私の目の前にある」
その歌声は嘆きであり、弔いであり、願いであり、生きているという熱でもあった。
その熱は、画面を通してもなお、わたしたちのからだの奥まで強く強く伝播する。

3.11から早6年、4.25から2年。
それらの災い自体を風化させないことはもちろん、
その災いがもたらした爪痕が残る場所で生きている人がたくさんいること。
そのことも今新たな気持ちで刻まなければいけない気がしている。
そして、その悲惨な状況下でも瞳を輝かせ、高い声で笑いながら、大地と対峙する子どもたちがいること。その子どもたちの存在に、明日を見出し、いのちを奮いたたせている人々がいることも。

▼あらすじ
標高2200メートルの傾斜地にある震源地の村、ラプラック。大地震により家屋がほぼ全滅状態の中、そこには、復興に向けて懸命に生きる家族がいた。放牧を営む父・ボラムサキャに憧れ、背中を追う天衣無縫なアシュバドルと、天真爛漫で天使のような妹・プナム。貧しい中でも希望を捨てず、助けあって生きる家族。互いに手を取り合うその姿は、古き良き時代の日本を彷彿とさせ、どこか懐かしくも感じる。

▼Information
『世界でいちばん美しい村』

2017年3月25日(土)より東劇ほか全国順次公開‬
監督・撮影:石川梵‬ ‪
ナレーター:倍賞千恵子‬ ‪配給:太秦‬ ‪
公式HP:himalaya-laprak.com

 

© 2016 Jackie Productions Limited


5.『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

24歳でジョン・F・ケネディと結婚、31歳でホワイトハウスに入り、34歳で未亡人になったジャッキーことジャクリーン・ケネディ。
これは、ファッションアイコンとしても世界に愛された華やかな彼女が、愛する夫を<伝説>にするべく、強い意志で臨んだ最後の使命にまつわる物語。

アカデミー賞で、主演女優賞・作品賞・衣装デザイン賞の3部門にノミネートされた本作は、『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキーがプロデューサーとして参加し、パブロ・ラライン監督にオファー。監督を引き受ける条件は、“ナタリー・ポートマン主演”だった。それは、彼女にオスカーをもたらしたアロノフスキーの考えと一致したという。

大抜擢のナタリー・ポートマンの素晴らしさは言うまでもない。
暗殺前後での顔つきの変化、話し方のチャーム、表情に宿る陰影に目を奪われた。忘れられてたまるか。
ただの過去の人になんてするものか。
深く暗い悲しみの中燃やした、冷たく固い決意は命をもかけて遂行される。

ジャッキーが成し遂げた厳かな葬列と、黒いベールの下にかすかに見える国葬を仕切るファーストレディの毅然とした顔。映画の中に、実際の映像が織り交ぜられているのも印象的だった。
愛する夫の妻として、大統領の妻として、譲れない想いを貫いた強く美しい女性の生き様がそこにあった。

▼あらすじ
1963年11月22日、テキサス州ダラスでのパレードの最中、ケネディは銃撃された。目の前で夫が頭を銃で撃ち抜かれるのを目の当たりにし、怒りと恐怖で震えるジャッキー。でも、悲しんでいる暇などなかった。事態を受けて、遺体と共に帰国する機内で副大統領が大統領に就任、刻一刻と夫が過去の人となっていくのを目の当たりにする。

▼Information
『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

3月31日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開

監督:パブロ・ラライン
製作:ダーレン・アロノフスキ― ほか
脚本:ノア・オッペンハイム
出演:ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、ビリー・クラダップ、ジョン・ハート
配給:キノフィルムズ
公式サイト: jackie-movie.jp


Text/Miiki Sugita