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近頃、ちょっと気になるあの本、この本 #4 【こだま『夫のちんぽが入らない』】

読んだら分かる、この本はこのタイトル以外ありえない!
こだま『夫のちんぽが入らない』

 Text/Miiki Sugita

—読後感にすごく寄り添う装丁だと思った。涙を拭きつつ、綿毛と星座を改めて眺める。この本の、果てしない深さと儚いほどの優しさ、だ。



こだま『夫のちんぽが入らない』


一体何度「ちんぽ」と口にしただろう。
「『夫のちんぽが入らない』読んだ!」勧めてくれた友人に報告。
貸す約束をしていた先輩には「夫のちんぽ、明日渡します!」。
本屋さんにもはっきりと聞いた。「『夫のちんぽが入らない』ありますか?」。
「ちんぽ、もう4回読んだけど、4回とも泣いたわ」既読者同士に限っては、もはや「ちんぽ」で通じるので、愛と尊敬を持って簡略をさせていただいている始末である。
ややユーモアを交えさせてはもらったが、笑い話では断じてない。
タイトルを口にすることを恥ずかしがっていることを恥じてしまうくらい、いやむしろ、読み終わった時に一番近くにいた人の肩を叩いて、「『夫のちんぽが入らない』絶対読んで!」と、言いたいくらいの本なのだ。

いささか衝撃的なこのタイトルさえも、世間的にはやや免疫ができてきた。
発売たった1日で重版がかかる本は早々ないだろう。しかも初の著書で、小説ではなく、エッセイで。そう、“入らない”のは、実話なのである。
これは、夫のちんぽが入らない「私」が、その「行き止まり」と戦い、苦しみ、病んで、それでも共にいる夫との20年史である。

異例の反響は、どうもタイトルだけの仕業じゃないぞ…というのは、読み始めて5分もしないうちに気づく。
世にも優しい二人の世にも壮絶な半生は、「分かってもらいたさ」と「分かってもらえなさ」を繰り返して、私たちを深いところまで連れていく。
セックスの話じゃない、もっともっと深いところだ。
しかも、深刻この上ない話を、見事なまでの軽妙さと抜群のユーモアで語り、私たちを笑わせる。それもまた著者の優しさだと感じて、再び涙してしまう。

人間同士がガチンコで向き合うって、心をすり減らして、傷だらけになることなのだ。それでも傷口を雨に沁みらせながら、風に疼かせながら、かさぶたになってもなお痒がりながら、結局一緒にいたいという愛だけを盾に突き進むしかない。
“ちんぽが入らない”という肉体における一般的常識を逸脱した形の人もいれば、例えば “彼がちんぽを入れてくれない” とか、“妻がちんぽを入れさせない”とか、もっと言えば“夫の浮気が治らない”“妻はもう自分を好きじゃない”とか、ありとあらゆる恋愛・夫婦・家族関係における「行き止まり」と戦うすべての人が強く共鳴する部分があると私は思う。

2回目を読み終えて、もう1冊買った。1冊は自分用、もう1冊は貸す用である。こんな本の買い方をしたのは、初めてだ。
この本に出会うまでの人生、「ちんぽ」などという言葉を発したことが一度もなかったということだけ、最後に補足しておきたい。でも、素晴らしすぎて、言わざるをえなかった。ちんぽ解禁上等である。もう一生分言った気がしているが、まだまだ言うだろう。『夫のちんぽが入らない』、絶対読んで!

夫のちんぽが入らない/こだま/扶桑社