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【1月公開の注目映画】編集部のおすすめ5選

©2015 Lily Harding Pictures, LLC All Rights Reserved.  © Jon Pack, Hall Monitor Inc.



1.『マギーズ・プラン-幸せのあとしまつ-』

元カノとか前妻とか、そういうのは嫌だ!
相手の過去を道連れに今を生きるなんて、絶対に御免だ!
と、思っていたのだけど、どうやら、そうでもないらしい。
脅威でもバトルでもない、結託という女たちの在り方。
旦那が前妻と一緒にいた方が、きっと幸せになれる…
だから、返そう! 協力して!

そう来たか。思わず声に出してしまった。
これは、前代未聞のとある計画についての物語だ。

大学で働くマギーは、妻子持ちの学者のジョンに出会い恋に落ちた。
キャリアを極める妻ジョーゼットに嫌気がさし離婚したジョンは、マギーと結婚し、娘を授かった。しかし、マギーはジョンとの生活に不安を覚え、なぜかジョーゼットに魅了されていく…。

『6才のボクが、大人になるまで』に次いで、イーサン・ホークの夢追い人ならではのダメっぷりと、だからこそのチャーミングさには終始惚れ惚れしてしまった。
あぁ、全く! 愛すべきダメ男! と心の中で叫んだほどだ。
グレタ・カーウィグのお節介こじらせ感も、ジュリアン・ムーアの才媛っぷりも、等しく人間らしくて、魅力的だった。
嫌いなヤツが出てこない物語は、ただただかわいい。

“とっ散らかった人生ほど、愛おしい”
そうそう、男女ってなぜか、あらぬ方へあらぬ方へととっ散らかっていくんだった。結んで、もつれて、切って、つなげて、転んで、起き上がって。
予想だにしない形に仕上がるのが、愛と人生。

▼あらすじ
NYの大学で働くマギーは、文化人類学者・ジョンと出会い、恋に落ちる。彼の妻ジョーゼットは教授として働くバリバリのキャリア。家庭を顧みない妻に疲れ果てたジョンは離婚を決意、自分の小説を好きだと言ってくれるマギーと再婚する。数年後——娘も授かり幸せに見えた2人だが、仕事も辞め小説家の夢を追い続けるジョンとの結婚生活に不安を感じるマギー。一方、忙しいジョーゼットの子供たちの面倒を見るうち彼女とも親しくなり、彼女が“鬼嫁”ではなく知的で魅力的で、今でもジョンを深く愛していると気づく…。
 

▼Information
『マギーズ・プラン-幸せのあとしまつ-』
1/21(土)よりロードショー

監督・脚本:レベッカ・ミラー
出演:グレタ・ガーウィグ、イーサン・ホーク、ジュリアン・ムーア
公式HP: http://maggiesplan.jp




(c) 2016 FM Films, LLC.  All Rights Reserved.



2.『沈黙-サイレンス-』

日本が誇る稀代の作家遠藤周作没後20年、刊行から50年を経て、
その物語は動き出した。
映画『沈黙』。数多の困難を乗り越えて実現した、世界の映画史に残る一大プロジェクトだ。
「初めて原作を読んだあの日から、ずっとこの作品のことを考えてきた」。巨匠マーティン・スコセッシ監督が、原作と出会ってから実に28年もの月日が流れていた。

キャストは主演のアンドリュー・ガーフィールドを筆頭に、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソン、日本からは窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシら、各世代の実力派が名を連ねる。演者はもちろんのこと、綿密な時代考証と日本人ならではの繊細な職人技が生かされた美術にも目を奪われた。

物語の舞台は17世紀江戸初期、長崎。激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるため、ポルトガルから日本にたどり着いた若き司祭ロドリゴ。彼の目に映ったのは想像を絶する日本だった。
守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。
心に迷いが生じた時に初めてわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。

信仰といのち、その尊厳。人間の強さ、弱さ。
信じること、そして、生きることの意味。
時代は流れど、混沌を極めるこの現代、そこに生きる我々にとっても、この作品が投げかけるメッセージは、あまりに深く重く、そして、尊い。

“人間がこんなに哀しいのに
主よ海があまりに碧いのです“
映画を観終わった後、この言葉の奥にどんな景色を見るのか。
今を生きる者の目で、どうか確かめてほしい。

▼あらすじ
17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教 (信仰を捨てる事)したとされる高名な宣教師フェレイラを追い、弟子のロドリゴとガルペは 日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと潜入する。日本にたどりついた彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、その中で弾圧を逃れた“隠れキリシタン”と呼ばれる日本人らと出会う。それも束の間、幕府の取締りは厳しさを増し、キチジローの裏切りにより遂にロドリゴらも囚われの身に。頑ななロドリゴに対し、長崎奉行の 井上筑後守は「お前のせいでキリシタンどもが苦しむのだ」と棄教を迫る。そして次々と犠牲になる人々―。
信仰を貫くか、棄教し信者達の命を救うか。
—究極の選択を迫られる。

▼Information
『沈黙-サイレンス-』
1/21(土)より全国ロードショー

原作:遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊)
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジェイ・コックス  
出演:アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ 配給:KADOKAWA
公式HP: http://chinmoku.jp

 

(C)2016 Gaumont / Mandarin Cinema / Korokoro / M6 Films



3.『ショコラ〜君がいて、僕がいる〜』

「『最強のふたり』で主演男優賞を受賞したとき、僕はフランスで成功した最初の黒人アーティストだと言われた。でも、忘れないでほしい。僕の前にショコラがいたことを」
そう語るのは、主人公ショコラことラファエル・パディーヤを演じた俳優オマール・シーだ。

映画『ショコラ 君がいて、僕がいる』は、フランス史上初の黒人芸人ショコラと、彼を支え続けた相方の白人芸人フティットの真実の物語。フティット&ショコラは、かつては20世紀初頭のベル・エポック期のフランスで万人を魅了し、一世を風靡した道化師コンビだ。
しかし、彼らの間を引き裂き、ショコラを闇の底に追いやってしまうほど人種差別の根は深かった。パリの名門ヌーヴォー・シルクに専属となり、映画史上初めてスクリーンに登場した彼らの功績は、長らく広くには伝えらえなかった。

それでも、彼らはたしかに世界を変えていた。笑い、だけでなく、歴史を。
2人のステージは、時代の波よりもはるか高く、引き裂くものの力よりもずっと強くあった彼らの生き様そのものだった。

この世界で生きる上で、知っておかなくてはならないことがある。
真実から目を逸らさず、胸に刻んでおくべきこと。
この映画は、そういうものだと私は思う。
2017年で、ショコラがこの世を去って100年。
「君がいて、僕がいる」。
たとえ言葉に出せなくても、互いにそう思い続けた2人の“ほんとう”を
1人でも多くの人に知ってほしい。

▼あらすじ
1897年、フランス北部の小さなサーカスで出会い、コンビを組み人気を博した白人芸人フティットと黒人芸人ショコラ。パリの名門サーカスの専属となった2人は名声を手にするが、人種差別の世間の偏見がショコラの前に立ちはだかる。その現実から逃れるかのように、ショコラはギャンブルに溺れていく。彼の才能を信じる相方のフティットは、ショコラを支え続けていく。

▼Information
『ショコラ〜君がいて、僕がいる〜』
1/21(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

監督:ロシュディ・ゼム
出演:オマール・シー、ジェームス・ティエレ、クロチルド・エム、オリヴィエ・グルメ
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
公式HP: http://chocolat-movie.jp

 

©ワイズ出版



4.『なりゆきな魂、』

最近買った漫画の中でも、一際衝撃的だったものがある。
つげ忠男の『成り行き』だ。男が目を覆う指の隙間からこちらを見つめる白黒のジャケットと、筆致そのものが成り行くままに書かれたような、そのタイトル。
異彩のムードを放つのは、もちろんジャケットだけではない。

初老の男が花見の場で、男女の殺し合いを凝視する「夜桜修羅」から始まる本作は、その独特のテンポでいい意味で読者を置き去りにし、まさに事件の傍観者になったような錯覚に陥らせる。リアリズムとノスタルジア。そして、現実がねじれてゆく幻想味とが混然一体となり、唯一無二の作風を織りなしている。

映画『なりゆきな魂、』は、この『成り行き』から3編と、『つげ忠男のシュールリアリズム』から1編、そして、映画オリジナルストーリーを加えて構成された新たな物語だ。戦争という災禍から生きのびた人びとが築き上げた戦後日本の社会はいつ、どこで、こんなふうに変わってしまったのか。
“いま”に強烈な違和感を覚えるつげ忠男が作品に込めた思いを、瀬々敬久監督が受け止め、私たち観客へ真摯に問う。

感傷を排した乾いたタッチで描かれるつげ忠男作品。
しかし、それを以ってつづられている愛と暴力の物語は、読後、えも言われぬ感傷をもたらす。映画も然りだった。乾いた画面に浮かぶ涙や血に、生死を思わずにはいられなかった。直接的には絡み合うことはないエピソードが、「人が生き、死ぬ」という人間の成り行く姿に重なり、ラストに向かっていく。

『なりゆきな魂、』
改題されたタイトルの、“魂”の後に続いていくものは何なのだろうか。
生と死のその先。魂の行き場(ラスト)は、未だ私たちにはわからない。

▼あらすじ
戦後間もない貧しい下町の一角。進駐軍の米兵相手に喧嘩を挑む男、京成サブ。何度殴られても挑みつづけるその姿をひとりの少年が見ていた。少年は、逃走したサブを追いかけ、やがて、葦の原が生い茂る川原にたどり着く。
同じ川原にて晩秋の頃、釣竿をさすふたりの老人、花村と仙田。そこに車が停まり、男が女に無理やり乱暴しようとしているのを見る。ふたりは女・有希を助けようとするが、逆上した男は殺意をむき出しにして容赦なく暴力を振るう。三人は必死に抵抗するうちに歯止めが利かなくなり…。
ほか、バス事故に運命を翻弄される人々や、満開の桜を楽しんでいた男の前に突如現れる幻視世界など原作4作品に、オリジナル1作を加え、1つの物語を描き出す。

▼Information
『なりゆきな魂、』
1/28(土)よりユーロスペース(渋谷)にてロードショー 第七藝術劇場(大阪)、シネマテーク(名古屋)、シアターキノ(北海道)、桜井薬局セントラルホール(仙台)、ジャック&ベディ(横浜)ほか全国順次公開予定

監督・脚本:瀬々敬久
原作:つげ忠男『成り行き』『つげ忠男のシュールレアリズム』(ワイズ出版)
キャスト: 佐野史郎、足立正生、柄本明、山田真歩、三浦誠己、町田マリー 栁俊太郎、中田絢千、川瀬陽太、石川真希、吉岡睦雄ほか
公式HP: https://nariyukinatamashii.com



© Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH



5.『エゴン・シーレ 死と乙女』

エゴン・シーレの絵が好き。もとよりは、そんな気持ちで選んだ作品だった。 でも、この映画で私が強く心惹かれたのは、ミューズそのものの生き様だった。 猛スピードで流れる愛と人生の“或る地点”。昇り詰め、或いは深く沈む彼らが描く作品には、色濃く軌跡が残る。
心の沸点、時として氷点。それは彼らだけではない、彼女たちの生きた跡だ。 だから、ミューズを描いた作品にいたく心酔してしまう。
美しくて、切なくて。眩しくて、儚くて。熱く、凍てついて。
シーレの名画『死と乙女』もその一つだ。

シーレの師であったクリムトを介し彼と出会い、貧困にも嫉妬にも耐え忍び、時代の波を乗り越え、創作の歓びを分かち合ったヴァリ・ノイツェル。
そんなヴァリを演じたフェレリエ・ぺヒナーが素晴らしく、気づけば彼女ばかりを追いかけていた。

ハチミツ色の髪を一つに結って、青い目で真っ直ぐシーレを見つめる彼女の揺るぎなき強さ。時折垣間見せる茶目っ気や大胆さ、誰よりも献身的に生きた彼女の姿は、切なくも頼もしく、胸の奥底をついた。
少なくともこのスクリーンの中で、彼女は紛れもなく、シーレの“たましいの恋人”だったと思う。
私も、誰かにとってのミューズでありたい。
傷つく覚悟と貫く意志、それから何よりも強い愛をもって、そう、“たましいの恋人”になりたい。
いくつもの女の艶やかな裸体と、異彩を放つ素晴らしい芸術、そして雪のように美しく短命な愛の隙間に、そんなことをふと思わせる映画だった。

▼あらすじ
20世紀の幕開けとともにウィーン画壇に現れたエゴン・シーレ。当時の芸術的タブーにも果敢に挑み、独自の作風を築き、瞬く間に時代の寵児となった。
数々のモデルと浮名を流したシーレの28年の人生と、その名画の誕生秘話を赤裸々にあぶり出した、愛と芸術の物語。
—第一次世界大戦末期のウィーン。シーレはスペイン風邪の流行によって、妻エディットとともに瀕死の床にいた。時を遡ること、1910年。美術アカデミーを退学したシーレは、16歳の妹ゲルティの裸体画で頭角を現していた。そんな時、ヌードモデルのモアと出逢い、褐色の肌を持つエキゾチックな彼女をモデルにした大胆な作品で一躍、脚光を浴びる。その後、敬愛するグスタフ・クリムトから赤毛のモデル、ヴァリを紹介されたシーレは、彼女を生涯のミューズとして数多くの名画を発表。幼児性愛者という誹謗中傷を浴びながらも、ふたりの信頼関係は、文字通りシーレを時代の寵児へとのし上げていく。しかし、第一次世界大戦が勃発。シーレとヴァリの関係も、時代の運命に翻弄されてしまう──。 ヴァリをモデルに描いた最期の絵。タイトルは「男と乙女」、後に「死と乙女」と改題されることになる。ウィーン表現主義の最高傑作のひとつとなったその絵画は、ふたりの稀有な絆を永遠に刻む愛の証となるのだった。

▼Information
『エゴン・シーレ 死と乙女』
1/28(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開

監督:ディーター・ベルナー
出演:ノア・サーベトラ、マレシ・リーグナー、ファレリエ・ペヒナー、ラリッサ・アイミー・ブレイドバッハ
配給:アルバトロス・フィルム
公式HP: http://egonschiele-movie.com


Text/Miiki Sugita