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カレーときどき村田倫子 #6 火星カレー


「春夏秋冬、朝昼晩カレーが食べたい!」そんなカレー好きによる、カレー好きのための連載。持ち物は、お財布とカメラと、ほとばしるカレー愛。自他共に認める、無類のカレー好き村田倫子ちゃんが、都内のカレー屋さんを訪ねます。  



往々にして、“未知”との遭遇は雨の日に起こるもの。
そう、6回目にして我々は、早くも地球を脱し、よりディープなカレーの世界へ足を踏み入れようとしていた…。山手線に乗り、池袋を目指していた我々が、まばらに降る秋雨を避けながら漂着した地は、火星だった!

というわけで、今回は、池袋から徒歩3分ほど。「地球上になかった味」「銀河級に美味しい」と評される火星カレーさんへ! 看板もものすごいインパクトです!  



今回は連載初のカウンター! 倫子ちゃん、なんだか、よりツウっぽく、様になっています。シェフとの距離が縮まった感じもして、いいですね。
「マスター、いつもの!」って言いたくなっちゃう距離感です。  



火星では、食券制を導入。
火星通貨に変換するべく券売機の前に立ち、さあて何のカレーにしようか…むむむむっ!!券売機に立つや否や驚き!  



馬カレー? 鹿カレー? 牛カレー? 羊カレー? カンガルーカレー?!
驚きを隠せずにいると、シェフの橋本さんが声をかけてくれました。
「色んなお肉を気軽に食べられるお店にしたいというのが、オーナーのこだわりの一つだったんです」  



たしかに、この価格で珍しいお肉を食べられるのはとても貴重な機会。
「お寿司屋さんでは気軽に色んなお魚が食べられるけど、気軽に色んな珍しいお肉が食べられる場所ってそうないですよね。そういう場所になればなあって」
橋本さんの言葉に納得!
カンガルーカレーの草トッピングと鹿カレーの豆トッピングをオーダー!  



倫子隊長に学ぶ心意気、攻めるときは攻める!
迷いましたが、ここは滅多に食べられないものをと、カンガルーカレーの草トッピングと鹿カレーの豆トッピングをオーダーしました!
火星カレーの楽しみ方の一つとして是非体験してもらいたいのが、このトッピングシステム。野菜や豆やチーズはもちろん、豪快に肉×肉でダブルミートを堪能することもできるのです。  



カウンター越しに、シェフ自ら届けてくださいました。
すぐさまカメラに収める倫子隊長の素早さにも注目!  



カンガルーカレー草トッピング\1,180円   


鹿カレー豆トッピング\1,080円


カンガルーカレーに、ほうれん草のバターソテーが添えられた草トッピングと、鹿カレーに、濃厚チキンスープで煮た彩り豊かなお豆をプラスした豆トッピング!
地球上にない味とはいかに?!  ではでは、心していただきます!  



 
お、おいしい!!! 食べたことのない味!
お肉も臭みもクセもなく、でも肉感もしっかり味わえる絶妙な加減。
スパイスに野菜や果物などの素材。様々な風味が後から後から追ってくるのに、決して喧嘩することなく一体化するという、もはや奇跡を感じる味わいです。  



色々試した結果、一番このルウに合うと決定づけた薬味が紅ショウガ。
カレーに紅ショウガ?
驚いた人にほど試してほしい! 本当に合うんです。
食べ進めるごとに、ルウについて聞かずにはいられなくなる味。
「このルウはどうやって生まれたんですか?」
その答えには、30年越しのヒストリーがあった。  


 

橋本さんは、若い頃はパリで服飾関係の職についていたという。
パリコレでのフィッティング経験をも持つ、ちょっと異例のシェフなのだ。
そんな橋本さんがカレー屋のシェフになったのは、旧友からの1本の電話がきっかけだったという。 電話の相手は、高校の同級生の綾部さん。綾部さんもゲームクリエイターとして成功を収めている、才能溢れる人だという。そんな綾部さんの要件は・・・
「一緒にカレー屋をやらないか?」「あのカレーを出したい」
突然の誘いに驚きつつも、思い当たる節はあったという。
そのカレーこそが、火星カレーの起源!



遡ること30年、当時学生だったオーナーの綾部さんが自宅で考案したオリジナルのルウだ。綾部さんは料理について特別な知識があったわけではなく、自己流で試行錯誤を繰り返して火星カレーのルウを生み出した。でも、今になってその調理法を調べてみると、偶然、素材の旨味を殺さない合理的な方法だったというのだ。
当時を振り返りながら、橋本さんはしみじみと言った。
「すごく美味しかったんですよね」
橋本さんが火星カレーを始めたシンプルな理由が、その一言に詰まっている気がした。  



「とにかく食べたことがない味だったし、以降もあんな味には出会わなかった」
そうか、“未知”の可能性を秘めているから、火星カレー。
この味と、秘められたヒストリーを知る前よりも、深い意味でそのネーミングに頷いた。
「今思うと、ルウが生まれた偶然は火星からのメッセージだったのかもしれないですね」
ユーモアを交えて話してくれる橋本さんは、優しくて笑顔が印象的な人。
この味を、このお店を知れてよかった。「偶然」は、誰しもに起こる、さりげなくて偉大なメッセージなのかもしれない。  



数十年別々の人生を歩んでいた2人が、かつて一緒に食べたあの味を求め、再会を果たす。再び動きだす友情と一皿をめぐる冒険の日々。
2人以外に知ることができないレシピを秘めて、今日も火星は満員御礼。
最大のスパイスは、冒険とロマン、そして多分、友情だ。
 

火星カレー
住所:豊島区西池袋3-27-3 S&KビルB1F
電話番号:03-5927-8959
営業時間:
【平日】11:45〜14:30/18:00〜21:45(L.O.21:15) 
【土曜】11:45〜15:00/17:30〜21:45(L.O.21:15)
【祝・振替休日】11:45〜17:00(L.O.16:30)
※ 火曜は昼のみの営業
※ 昼・夜ともに売り切れ次第終了
定休日:日曜日


【食べりんログ(倫子隊長による編集後記)】

怪しげなネーミングに、ポップな看板、店先には宇宙人らしきマスコット…。 こ、れ、は、、、。新たなるカレーとの境地に出会えそうな期待に満ち溢れ、扉をあけると、宇宙人!!ではなく、落ち着いて温かみのある店内と、なんとも温厚そうな店主の笑顔。  
薄暗い照明にLEDライトチカチカの、テーマパーク的宇宙空間。ピンクやらシルバーやらポップな髪色で、ギラギラの衣装の店主…と先入観が酷すぎる架空像にビビっていた私は、ほっと胸を撫で下ろす。

カウンターに席に腰を落ち着かせカレーをオーダー。
まず、口の中に広がる野菜の甘みに、極秘のオリジナルブレンドによる、旨みの相乗効果による深み…からの後からくる辛さ!!そして、24年間地球で生きてきて、初めましてのお肉達。
今まで食べきたカレーには当てはまらないジャンルに、取材そっちのけで食べまくる私。未確認食物のスペック、はんぱないぜ…。
さすが、火星を看板に掲げるカレー屋だ!

人当たりのよい店主との会話が弾むなか、パリコレでのフィッターの経歴や、オーストラリアでの生活…。今、カレー屋のカウンターで腕を振るう姿からは想像もつかない話題が、でてくるでてくる…。
これは、ある意味未知数すぎて、色々納得した私でした。
火星の意味は深い。

Navigator&text:Rinko Murata
Photo:Kayo Sekiguchi
Edit:Namiko Azuma
Text:Miiki Sugita