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【11月公開の注目映画】編集部のおすすめ5選

©2016 安倍夜郎・小学館/「続・深夜食堂」製作委員会


1.『続・深夜食堂』
夜も更けた深夜に店が開く、繁華街の路地裏にある小さな食堂「めしや」。
「できるもんなら何でも作るよ」マスターの人柄と腕をして、食べたいものが食べられるのも人気の秘密だ。客はいつも少しの問題を抱えながら暖簾をくぐり、そして、感激したり、涙したりして帰路につく。

赤いウィンナー、ポテトサラダ、ナポリタン、レバニラ炒めにあさりの酒蒸し、紅ショウガの天ぷら。猫まんまやとろろご飯なんていう人もいる。
料理には必ず“思い出”が、思い出には必ず“人”が付随する。
親と子、夫と妻、彼と彼女、かつての友、上司と部下…。
今宵も、逸品を前に、客たちの悲喜こもごもな人生が交錯する。

「あの味」で喜びを祝い、悲しみを癒してくれるマスター。
言葉少なに、そっと、明日に向かって帰っていく客たちの背中を押してくれる。
料理は、いのちだけでなく、こころの源。
この作品を見ると、心の底からそう思う。

四季の巡りのように、少しずつ色を変える人間模様の中、
“変わらないものがそばにある”って、嬉しくて、頼もしいことだ。 それは、この作品の最大の魅力でもある。 変わらぬ佇まいで、誰の居場所にもなれる場所。
特別じゃない、誰のものにもなる物語たち。
その角を曲がれば、馴染みの店がそこにあるように、
暖簾をくぐれば、あのマスターやあの味が待ってくれているように。

できれば夜に、ちょっと1杯引っ掛けて観てほしい。
明日へ続く帰り道の前に、きっとあのカウンターの常連たちと良い夜を過ごせるはず。

▼あらすじ
ある夜、“めしや”に常連たちが揃いも揃って喪服姿で現れる。そんな中、もう一人、喪服姿で来た範子。だが、彼女は喪服を着るのがストレス発散という一風変わった女性だった。そんな彼女が本当の通夜の席で喪服の似合う渋い中年男と出会い心惹かれて…。また別の客、近所のそば屋の息子・清太は、父亡きあと、店を切り盛りする母親に、年上の恋人さおりとの結婚を言い出せずにいた…。九州からやってきた客の夕起子は、息子の同僚という男性に大金を渡してしまう。騙されたのではと常連客たちも心配するが、あまり気にも留めぬ様子。そんな折、迎えにやって来た義弟が夕起子の身の上話を明かし…。春夏秋冬、ちょっとワケありな客が現れては、マスターの作る懐かしい味に心の重荷を下ろし、胃袋を満たして、店を後にしていく。

▼Information
『続・深夜食堂』

新宿バルト9ほか絶賛公開中!
原作 安倍夜郎「深夜食堂」(小学館ビッグコミックオリジナル連載中)
監督:松岡錠司
脚本:真辺克彦、小嶋健作、松岡錠司
フードスタイリスト:飯島奈美
出演:小林薫、河井青葉、池松壮亮、小島 聖 キムラ緑子、渡辺美佐子 井川比佐志、不破万作、綾田俊樹、山中崇、安藤玉恵、宇野祥平、金子清文、中山祐一朗、須藤理彩、小林麻子、吉本菜穂子、平田薫、谷村美月、篠原ゆき子、片岡礼子、松重豊、光石研、多部未華子、余貴美子、佐藤浩市、オダギリジョー

公式サイト
http://www.meshiya-movie.com/

 

©El Deseo


2.『ジュリエッタ』
『オール・アバウト・マイマザー』、『トーク・トゥ・ハー』などの名作を生んだスペインの巨匠、ペドロ・アルモドバル監督。最新作もまた、過去の名作と同じく“運命”と“親子”をテーマに、持ち味の色彩美と巧妙な伏線で、脆くエモーショナルな女の心情をあぶり出した。 忽然と姿を消した愛する娘。探し回り、待ち続け、荒み、途方に暮れ、そして忘れることを選んだ母。新たな人生を歩もうとしていた。しかし、母が子を想う絶対的な愛情を、完全に捨て去ることはできない。初めて抱いたあの柔らかな重み、出かける前に結ったあの細く美しい髪、そして、あの日見た強く大人びた横顔。 ジュリエッタは、自分の半生を回想する。 過去を解き明かしながら、娘に向けて認める長い手紙。 私たちはその読み手として、ひとつの家族の秘められた過去と真実を目の当たりにする。 もう少し話していれば、もう少し尋ねていれば、もう少し何かが違えば、こんなことにはならなかったんじゃないか。 すれ違う人生を目前に、つい、そんなことを思ってしまう。 でも、私たちが閃光のような瞬間瞬間の連続を生きている限り、 その“もう少し”こそが「運命」だったのかもしれない。 人生って本当にやるせない。 例え血の繋がった親子であっても、人が人を完全に知るということは難しい。そのくらい、人一人の深さと複雑さを思い知らされた映画でもあった。 母の思いもよらぬことで、苦悩の日々を送っていた娘。 娘が考えるよりもずっと、孤独で寂しかった母。 本当に伝えたいことが本当の温度で伝わるまでには時間が掛かる。 だからこそ愛に光が差すまで、どうか目を据えてこの長い手紙を読んでほしい。

▼あらすじ
スペインのマドリードで、ひとりで暮らしているジュリエッタは、自分を心から愛してくれている恋人ロレンソにも打ち明けていない苦悩を内に秘めていた。ある日、ジュリエッタは偶然再会した知人から「あなたの娘を見かけたわ」と告げられ、めまいを覚えるほどの衝撃を受ける。12年前、ひとり娘のアンティアは理由も語らずに、突然姿を消してしまったのだ。ジュリエッタはそれ以来、娘には一度も会っていない。忘れかけていた娘への想いがよみがえる。ジュリエッタは、心の奥底に封印していた過去と向き合い、今どこにいるのかもわからない娘に宛てた手紙を書き始めるのだった……。

▼Information
『ジュリエッタ』

新宿ピカデリーほか全国絶賛公開中!
督・脚本:ペドロ・アルモドバル
原作:アリス・マンロー『ジュリエット(Runaway)』(新潮クレスト・ブックス)
出演:エマ・スアレス、アドリアーナ・ウガルテ他

公式HP
http://julieta.jp

 

©1972 北杜夫/新潮社 ©2016「ぼくのおじさん」製作委員会

 

3.『ぼくのおじさん』
芥川賞作家、北杜夫。純文学としてのその才能を絶賛される一方で、ユーモア・エッセイなどでも多くの人々に愛された。そんな彼が自らをモデルに、兄の家に居候していた頃の体験を、持ち前のユーモアセンスを以って紡いだのが「ぼくのおじさん」だ。

家の中で一番役に立たないおじさん。大人のくせに、お小遣いもくれないおじさん。講師のくせに、勉強もちっとも教えてくれないおじさん。
スポーツもからっきしなおじさん。屁理屈ばっかり言っているおじさん。 が、或る日突然恋に落ち、万年床を抜け出して、ハワイへ飛び立った! 企画・脚本を手がけたのは、須藤泰司(ペンネーム春山ユキオ)。 小学生の頃から原作の面白さに魅了され、主人公の名をペンネームに脚本を執筆したという。監督は、現代の片隅に生きる人々の生きざまを、愛情と共感を込めて描き出す山下敦弘。独特の笑いとテンポも山下映画の醍醐味だ。 映画界に突如現れた新キャラ“おじさん”を演じるのは、松田龍平。 世にもダメな人って、結局全然憎めない! その絶妙なチャーミングさで、観客をある意味虜にする。 ダメな大人としっかり者の子どもの、可笑しくて愛おしいロードムービーは、いつかの記憶を思い出させた。 ディスコ時代を謳歌した叔母にこっそり夜中に連れ出してもらい、田舎町をドライブしたこと。サンルーフを全開にして、聴いたことのない音楽を聴いた。 大人の大人らしからぬ行動は、子どもにとっては新鮮で、ちょっとした刺激だ。 父でもなく、母でもない“大人”の横顔に教わることって結構あると思う。 きっと“ぼく”も、大人になっても忘れないはず、“おじさん”との強烈な日々。

▼あらすじ
学校の課題で、「自分のまわりにいる大人」をテーマに、作文を書くことになった“ぼく”。テーマに選んだのは、我が家に居候する、ぐうたらなパパの弟“おじさん”だった。 大学で哲学を教える臨時講師というものの、講義は週に一コマ。 ほかの時間は家でぐうたらしてばかりで、春山家で一番の役立たずです。そんなダメダメな“おじさん”が、お見合いで美女・稲葉エリーに一目惚れ。しかし、エリーはハワイへ帰国することに。芽生えてしまった恋心に、いてもたってもいられない“おじさん”。エリーを追いかけ、雪男と共にハワイへ向かいます。 そこへ恋のライバルが出現。果たして、“おじさん”の恋の行方は?

▼Information
『ぼくのおじさん』

渋谷TOEIほか全国絶賛公開中!
原作:北 杜夫「ぼくのおじさん」(新潮文庫刊『ぼくのおじさん』所収)
監督:山下敦弘
脚本:春山ユキオ
音楽:きだ しゅんすけ
出演:松田龍平、大西利空 (子役)、真木よう子、戸次重幸、寺島しのぶ、宮藤官九郎、戸田恵梨香

公式サイト
http://www.bokuno-ojisan.jp/




©2016 日活


4.『ジムノペディに乱れる』
1971年、当時には全く新しい表現で性を描き、社会現象の一つとなった「日活ロマンポルノ」。男性向けに作られながらも、女性とその生き様を深く美しく描いた作品たちは、映画史に残る最もセンセーショナルなレーベルとなった。
「芸術か?猥雑か?」
製作当時からそんな社会的論争をも生んだ「日活ロマンポルノ」が今の世に再起する。その名も、ロマンポルノ・リブート・プロジェクト。

総尺80分前後、製作費全作一律、撮影期間は1週間、完全オリジナルかつロマンポルノ初監督、そして10分に1回の濡れ場。これが、新ロマンポルノマニフェストだ。
そんな新プロジェクトの解禁を飾るのが、行定勲監督、板尾創路主演の『ジムノペディに乱れる』。これまで数々の名作を世に送り出した監督が、新たなフィールドに挑む。

そして、“ロマン”ポルノである限り、絶対触れておきたいのがヒロイン。
本作が本格的映画デビュー作となる女優、芦那すみれ。透明感の溢れる美しさと、繊細さと大胆さどちらをも兼ね備えた表現力。おかしな言い方だが、洋服を着ていると、ちょっと脱ぐなんて、ましてや乱れるなんて想像がつかない。内に秘める官能と、放たれる異彩。ロマンポルノが今の時代に再起するからこその魅力として、彼女の存在はとても新しく、大きい気がした。

生誕150周年を迎えるエリック・サティの「ジムノペディ」の音色と、光の映像美、香り立つような性交。五感を余すことなく刺激する行定映画のメソッドも健在だ。時に慰めのような物悲しさで、また時にはジョークのような唐突さで、ぶつかり合いながら、乱れる男と女。
10分に1度、それぞれ違った交わりがそこにはある。

▼あらすじ
1週間―。映画監督の古谷は、肌のぬくもりを求めて女たちの隙間を彷徨っていた。仕事、名声、そして愛…。全てを失った男が、辿り着いた先に見つけたものとはー?ラブストーリーの名手・行定勲監督が、切なく不器用な大人の愛を、美しい映像にのせ官能的に描いた入魂の一作。

▼Information
『ジムノペディに乱れる』

11月26日(土)新宿武蔵野館他全国順次公開
監督:行定勲
出演:板尾創路、芦那すみれ、岡村いずみ

公式サイト
http://www.nikkatsu-romanporno.com/reboot/

 

ⓒTRIGON PRODUCTION s.r.o. W.I.P.s.r.o. J&T Finance Group,a.s. CZECH TELEVISION SLOVAK TELEVISION 2011

 

5.『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』
1988年、ある家の屋根裏部屋で、埃を被った一冊のスクラップが見つかった。そこには、かつてナチス・ドイツによる迫害の危機にさらされていたユダヤ人の子どもたちの写真や名前が記されていた。彼らを自国イギリスに脱出させるべく行われた<キンダートランスポート>。その中心となった人物こそが、この家の主人、ニコラス・ウィントンだった。

スクラップが見つかるまで、偉業を語ることなく、余生を生きていたニコラス。彼が救った669人の子どもたちは、ホロコーストの時代を生き抜き、多くの子孫を産み育てていた。その数、約6000人。この映画は、ニコラスと彼が救った子どもたちの人生に迫る、ドキュメンタリーだ。

映像からでさえ、こんなにも伝わる当時のチェコの緊迫と恐怖。せめて子どもだけでも、と身の裂ける想いで別離を決める親たち。「我が子はどこかで生きている」そう思えることだけが、明日の我が身も保証されない日々に差す一筋の光だったのだろう。

番組のサプライズ企画で子どもたちとの再会を果たしたニコラスは、静かに涙を流した。そして大きくなった体を、ギュッと抱きしめた。
救われた“子ども”の1人はこう言った。
「私たちは彼の家族。彼は世界で一番大きな家族の家長です」
そして、その孫はこう言った。
「彼がいなければ、この部屋の誰もいなかった。パパも私も」

29歳で、多くの人の命と人生を救ったニコラスの信条は生涯変わらなかった。
「不可能なようでも必ず道はある」
彼が歩んだ道は、今、世界が知るべき、事実の物語。
いつだって、未来は小さな手の中にある。
だからこそ、いつかは我が子にも見せたい。そんな映画だった。

▼あらすじ
1938年、第二次大戦開戦前夜、ナチス・ドイツの脅威が迫るチェコスロヴァキアで、669人ものユダヤ人の子どもたちの命を救った一人のイギリス人がいた。彼の名はニコラス・ウィントン。だが、それから50年の間、その事実は世界中の誰にも知られることはなかった。
1988年、ニコラスの妻グレタは、物置となっていた屋根裏で一冊のスクラップブックを見つけ、その内容に驚く。それは夫が50年前に関わった「チェコスロヴァキアからイギリスへの子供たちの救出作戦の記録」だった。そこには、子供たちの顔写真と名前、両親の名前、当時の住所、イギリスでの引き取り先など、すべてが整理され、詳細かつ丁寧に記されていた。ニコラスは妻にさえ、“キンダートランスポート”と呼ばれるその救出作戦に関わったことを一切話していなかった。それには、ある理由があった…。
ニコラスに命を救われた子どもの一人で、その後カナダでTVジャーナリストとして成功したジョー・シュレシンジャーは、自らの経験を振り返り、自分たちを救った英雄の足跡を辿り、ニコラスが指揮した奇跡の救出作戦の全貌を解き明かしていく。

▼Information
『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』

11月26日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開

出演:ニコラス・ウィントン、ヴェラ・ギッシング、アリス・マスターズ、ベン・アベレス、クラーラ・イソヴァー、エリ・ヴィーゼル、ダライ・ラマ14世  
ナレーション:ジョー・シュレシンジャー
製作・監督・脚本:マテイ・ミナーチュ

公式サイト
http://nicholaswinton.jp/

Text/Miiki Sugita