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【7月公開の注目映画】編集部のおすすめ5選

田島オフィス 
 

1.『DEVOTE』

CG、3D、4D…映像技術が著しく発達している今世の日本に、音も声もつけずに、映画原点に向かって挑戦を続ける監督がいる。和製・チャップリンとの異名を持つ、田島基博だ。『シルエット』(2008年)、『ボレロ』(2012年)で立て続けに、変化によって変わる男と、その傍ら献身的な愛を貫く女を描いた。彼の次なるテーマは、『DEVOTE』=「捧げる」こと。それを「愛」と認識した人々だ。

人は常々、何かを捧げながら生きている。時間やお金。形あるものかもしれないし、目に見えないものかもしれない。それが「愛」だとしたら、はたしてそこに純粋は存在するのだろうか。他者と関わり、交わりながらでしか生きてはいけない人間への大きな問いかけだ。

沈黙の中だからこそ見えてくるもの。沈黙の中にしか見えないもの。他の誰でもない自分の中に宿る想像力を以って、物語と一体化した時、言葉の向こう側にあるものが、まさしく、“音もなく”ぐっと押し寄せてくる。無き声に耳を傾け、頭の中で色を選ぶと、次第に彼は「僕」に、彼女は「私」になり、自分だけの物語が出来上がるのだ。観客に仕掛けられるのは、そんな想像と共感の連動。

海は深い。だが、沈んだ時にしか、その深さがどれほどかはわからない。言葉の海もまた同じだろう。もしかするとこの映画は、観る者を相当深いところまで連れていってしまうのかもしれない。

▼あらすじ
29歳漫画家志望のナツオは、アシスタントをしながらデビューを目指している。しかし、筆が進まず悶々とした日々を送る。唯一の趣味は近所のコンビニに通い、店員ハルに接客をしてもらうことだった。 ひょんなことからハルと知り合えたナツオは、ハルの応援を得てデビューに向けて頑張るようになる。 ナツオの作品が入選し、自信を付けたナツオはハルに告白することを決意する。しかし、ハルはナツオの前から姿を消してしまった。ギャンブル狂の父親のためアルバイトで家計を支えているハルは、父親の借金が原因で風俗にも身をやつすようになっていた。偶然ハルと再会したナツオは事情を知り、何とかしてやりたいと考える。 ちょうどその頃、売れない漫才師東田と南はコンビニ強盗を計画している。 ハルの借金返済の為、職も家も失ったナツオはその計画を耳にし、先に実行してしまう。 犯罪を犯したナツオは、ハルに一緒に遠くへ逃げようと持ちかける…。

▼Information
『DEVOTE』

7月2日(土)から新宿K’sシネマにて連日21時よりレイトショー
監督:田島基博
出演:片山 享、木嶋のりこ、菅原大吉、大迫一平、中川智明、牛丸亮、羽立喬介、民本しょうこ、的場司、丸山正吾、関口あきら、渡壁りさ、城戸優立香、上田愛美、ほりかわひろき
公式サイト: http://devote-movie.info/




 

©此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013
©2016映画「セトウツミ」製作委員会

 

2.『セトウツミ』

それは例えば、自転車置き場や体育館裏、駅前や河原だったりする。あの頃にしか許されない何にもない時間、何でもない会話。「テスト嫌やなぁ」「太宰治知ってる?」「俺、抜いたんちゃう、身長」「このポテト長ない?」「◯◯さん可愛い」。

これは、高校生2人の何でもない時間を切り取った会話劇だ。大きなことは起こらない。ドキドキするようなロマンスも多分ないだろう。そんな映画が、なぜこんなに面白いのか。

原作は此元和津也の同名傑作漫画。ウィットに富んだセリフと独特な“間”。青春真っ只中の高校生が主人公なのに、帰宅部の二人が延々喋るだけという設定と空気感。その抜け感は、時代にピタリとハマっている。クールな内海に池松壮亮、お調子者の瀬戸に菅田将暉。今もっとも注目される二人が、ほかでは見られないここだけの顔を見せている。これは、「今」に尽力したキャスト・スタッフが贈る壮大なる無駄話なのだ。

放課後は、モラトリアムそのものだ。大人になる前の一瞬だけに光る強さと弱さ。どうでもいいことでとことん盛り上がれる勢い。バカバカしい楽しみ、どうしようもない退屈、どこかで感じている絶望、そして、何者でもない自分。それらはすべからく、いつか失われゆく。その美しさも含めて、あの河原には、そのすべてがある。

▼あらすじ
瀬戸と内海が並べば「セトウツミ」。とある河原、いつもの放課後、いつもの二人。高校の学ランに身を包んだ内海想と瀬戸小吉は、今日も階段に座り込んでとりとめのない話を交わしている。思いつきから始まった言葉遊び、気になる女の子に送るメールの文面について、ペットの猫のミーニャンのこと……。気だるくも軽妙な関西弁のやり取り、まったりと流れる時間。特別な事件は何も起きないけれど、何気ない日々のくだらなさや可笑しみ、愛おしさが、四季の移り変わりとともにキラキラと輝く。

▼Information
『セトウツミ』

新宿ピカデリー他大ヒット上映中!
監督:大森立嗣
原作:此元和津也 (秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
出演:池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ、鈴木卓爾、成田瑛基、 岡山天音、奥村勲、笠久美、牧口元美、宇野祥平
製作・配給:ブロードメディア・スタジオ
公式HP: www.setoutsumi.com




 

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3.『シング・ストリート 未来へのうた』

『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』で、映画と音楽を愛する人々に “特別な映画”を残したジョン・カーニー監督。最新作は、自身を投影した自伝的作品だ。彼はこう言った。「自分自身を反映した作品を作りたかった。ただの音楽の物語にはしたくなかったんだ」

舞台は1985年のダブリン、主人公は、14歳の少年。学校でのイジメや両親の不仲。子どもから大人へ向かうモラトリアムを鬱々と過ごす彼にとって唯一の至福は、ブリティッシュ・ミュージックを聴くこと。とある出会いから、彼は「音楽」に没頭することになる。

プレミア上映を飾ったサンダンス映画祭では、エンドロールの最中、待ちきれない観客がスタンディングオベーションとダンスで称えた。誰しもの中に眠っていた想いに火がついた。それは、こころが、からだが、突き動かされた瞬間だった。

未来へ向かって走り出すコナーの姿は、いつしか「あの頃」の自分に重なっていく。夢へと並走する仲間との絆、眩しく切ない恋、背中を押してくれた音楽、どこまでも走って行けたあの頃。その熱量や希望を思い出させるだけではなく、「まだ遅くない!」と、夢の持つ力を信じさせてくれる。いつからだって謳歌しよう。青春とメロディーは、きっと後からついてくる。

▼あらすじ
1985年、歴史的な不況に突入したアイルランドのダブリン。14歳のコナーは、父親が失業したために公立の荒れた学校に転校させられる。学校ではイジメられ、家では両親がケンカばかり、音楽狂いの兄とロンドンで大ヒット中のブリティッシュ・ミュージックを聴いている時だけがハッピーだ。ある日、自称モデルのラフィーナの大人びた美しさにひと目で心を撃ち抜かれたコナーは、「僕のバンドのビデオに出ない?」と声を掛ける。彼女がOKしたから大変! 慌ててバンドを組んだコナーは、無謀にもロンドンの音楽シーンを驚愕させるビデオを撮ると決意、猛練習と曲作りの日々が始まる。

▼Information
『シング・ストリート 未来へのうた』

7月9日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイント 他全国順次ロードショー
監督・脚本:ジョン・カーニー
出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、エイダン・ギレン、 マリア・ドイル・ケネディ、ジャック・レイナー、ルーシー・ボーイントン
配給: ギャガ
公式サイト: http://gaga.ne.jp/singstreet/





 

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4.『あなた、その川を渡らないで』

愛する人と生きていく歓び。それは例えば、同じ服を着るということ。同じものを食べるということ、寝癖を愛おしく思うことや、嵐の夜に抱き合えるということ。 歓びや哀しみを分け合い、同じ思い出を持つということ。そうして、歳を重ねるということ。 愛する人とわかれる哀しみ。それは、とても、言葉になんてできないこと。

これは、とある夫婦の歓びと哀しみ、すべてが真実の物語。愛する人と生きている人、いつか生きるすべての人におくる、ただ、ただ、愛の映画だ。

小さな村の川のほとりで暮らす老夫婦。ふたりは毎日同じ服に身を包み、日々を生きていた。春は花を互いに飾り、夏は水を、秋は落葉を、冬には雪を投げ合って笑う。そんなふたりに迫る、別れの時。おばあさんは言った。 「迎えに来たら手を握って、お揃いの服を着ましょう」

一緒になった時から、いつかはその時を迎えなければならなくなる。夫婦は、言葉にすると溢れかえるような数々の歓びと、言葉になんてとてもできない哀しみを共にしなければならないのだろう。だからこそ、おばあさんのように、何歳のあなたにも言いたい。「世界で1番あなたのことが好きだよ」

頬を寄せ合い、手と手を取り合って、生きる素晴らしさ。 誰もがこうありたいと願う、愛の姿がそこにあった。

▼あらすじ
美しい小さな村。川のほとりで、仲睦まじく暮らす結婚 76 年目の 98 歳のおじいさんと 89 歳のおばあさん。毎日、ふたりはおそろいの洋服を着て、手をつないで歩いてゆく。山菜を採りに山へ、老人会の遠足へ、街の病院へ、市場に買い物へ。慎ましくも愛に溢れた日々を送る白髪の恋人たち。いまの生活に満足しながらも、日々の気苦労は絶えず、ふたりは小さな心を痛めている。妊娠してしまった飼い犬。ふたりを心配し喧嘩をする子供たち。痛みが治まらないおばあさんのひざ。そして、おじいさんの身体。 雨がしとしとと降るある日、おばあさんは、ひどくなってゆくおじいさんの咳を聞きながら、「天国でも着られるように」と、おじいさんの洋服を静かにたき火にくべるのだった…。

▼Information
『あなた、その川を渡らないで』

7月30日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
監督:チン・モヨン
出演:チョ・ビョンマン、カン・ゲヨル
配給:アンプラグド
公式サイト: anata-river.com




 

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5.『ヒップスター』

「後ろがどっちか分からなかったから、前を向けなかったんだ。」 ポスターのキャッチコピーが、胸のど真ん中を打った。上を見上げる人々は、どんな詩を歌っているのだろう。その詩を、聴いてみたい。まず、そう思った。

『ショート・ターム』が記憶に新しい、デスティン・ダニエル・クレットン監督、鮮烈のデビュー作。シンガーソングライターのブルックは探していた。「なぜ歌うのか?」そんな問いかけに対する答えを。アーティストとしての葛藤にもがく中、彼を誇りに思う親友や、再会した家族との心の触れ合いを通じて、今の自分自身と向き合い、彼は、本当の意味で“生きている”ということに気づいていく。

いつから、いまの、僕だろう? そう投げかけながら、監督はこう語る。「これは単なるすかしたヒップスターの映画でも、クールになろうと努力する20代のオトコの話ではありません」主役は、妹と笑い合うことを思い出す兄であり、父親と心を通わせようとする息子であり、悲しみの中でも愛し合おうとする家族であり、悲劇に遭っても歌えると気づく若者なのだと。

表現者が表現者である前に、いや、あると同時に何なのか。そして、そのことはどんな力に昇華するのか。前を向き、上を見上げて歌われるその詩を、自分の耳で、自分の目で確かめたいと強く思う。

▼あらすじ
地元でファンを増やしつつある、1人の若きシンガーソングライター。無気力な日々を送る彼のもとへ、ある日、父親が3人の妹を連れてやってくる―。母の遺灰を撒くために。この再会をきっかけに、若者はオハイオに置き忘れてきた過去の自分を思い出し、別人のようになった今の自分と向き合っていく...。 サンディエゴのインディミュージック/アートシーンを舞台に、悲劇に直面してもなお、クリエイティブであろうとするアーティストの物語だ。

▼Information
『ヒップスター』

7月30日(土)新宿シネマカリテ他全国ロードショー
監督・脚本:デスティン・ダニエル・クレットン
出演:ドミニク・ボガート、アルバロ・オーランド
配給:ピクチャーズデプト
公式HP: http://hipsterjp.com/